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○加齢とともに、目の水晶体の黄色化や白濁をともなう白内障化(水晶体の光学濃度の分光特性が年齢と共に短波長域の透過率の低下が大きくなること)が進行していく。
これは50歳代から始まり、70歳代で84%にも達す。黄変化した水晶体の目では、対象の色の知覚が相当黄色の方向に色ずれし、白濁によって短波長(青)が散乱するため、高齢者による色の違い(色差)の識別能力は若年者に比べて低下する。
加齢による水晶体の波長別透過率測定として唯一世界的に公認されているEdward,A.によると幼児期では短波長400〜450nmを70%も透過しているが、加齢により50歳で50%、さらに75歳では10%まで落ち、短波長域から中波長500nm(青)にかけても透過率が急落し、見えにくくなっていく(図6)。

 

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○この加齢による水晶体の波長別透過率曲線に近似した曲線を持つ、いくつかの模擬水晶体フィルターやレンズで、青・緑・黄・赤を使った案内標識を撮影し、加齢につれてどの色が消えていくのかを見たところ、次のようなことがいえる。53歳対応レンズでは、黄はやや見えにくい。60〜70歳対応のレンズでは、青がやや見えにくく、黄は判断しにくくなる。70歳代後半対応のフイルターでは、青は消え黄は白色化する。さらに白内障に相当するといわれるレンズでは、青は全く消え、黄は白色と区別がつかない。また、三色混合色、つまり黒に近い色の誤認が多く、青と黄の二色混合つまり緑は比較的誤認しにくいことがわかる。一方、サインケースの裏光にむらがあるもの、低照明や逆光のものは、黄変化後はさらに視界が暗くなり、ひどく見づらいものになる。

 

 

 

 

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